file.003 宮殿
森の奥の朽ち果てた文明の残骸。
戦により破壊された宮殿は、何百年という時を
物語るかのように木々に囲まれ、幹や蔦に絡まれ苔むしていた。
その姿は歴史を語るが、かつての栄華を感じさせはしない。
けれど、不思議と悲壮感はなく、堂々とそこにあった。
かつての栄華を誇らしげに抱え、時間の流れに逆らうかのように、
必死でその姿を今に留めようとしている。
僕は、こんな老人になりたいと思った。
file.002 遺跡を守る
カンボジアの遺跡を監視している女性と遺跡で遊ぶ女の子。
女性の鋭い視線の先にあるのは、無邪気な女の子。
いや、現実への苛立ち、願い、焦燥、戸惑い
あるいは、まだ見ぬ未来への期待や不安かもしれない。
それに抗う強い瞳。そして女の子は、
今を慈しむようにお菓子の袋をそっと仕舞い込んだ。
file.001 少女
森の中、大木の上に一人の少女がいた。
カメラを向けると少し怯えたような表情を浮かべ、
体の四肢でしっかりと大木の幹や弦を握り締めた。
大木は少女を抱き寄せるかのようにその枝や葉で優しく包み込む。
少女と大木の姿は自然に溶け合い一体となったかのように
光の中で存在感を放っていた。
自然と人の繋がりに感じた生命の強さ。