file.010 遺跡の傍らで
朽ち果てた遺跡を照らす光。
労るように、見守るように、慈しみをもって
その温かさを惜しみなく与えている。
木々たちは、遠慮しているのか
傍らに芽吹くことはなく、遠巻きに眺め
そっと枝を伸ばしては、葉で身を隠す。
遺跡の傍らで空を見上げると
どこまでも青く透明な時間が僕を包んだ。
時を越えた場所で遺跡に語りかけた。
file.009 暁紅
暗闇が支配する暁のしじま。
東の空に微かな火が点ると燻っていた闇は、煌々と燃えはじめる。
炎は一面を焼き尽くそうと雲を割き、黒暗の空に襲い掛かる。
激しさをます焔のなか、
神殿がその神々しさをたたえ暁紅にその姿をあらわしたとき
僕は、言葉にできない美しさを知った。
file.008 金色の髪の少女
朝の光はその輝きを魅せつけるかのように眩しく照らし
労わるように世界を撫でている。
少女の金色の髪と光は呼応し黄金色に輝き
僕は、その響に目を奪われる。
少女が見つめる視線の先は
数羽の鳩が朝の空気に羽を馴染ませながら
今日に飛び出そうとしていた。
file.007 青い朝
青い朝、冷えた澄んだ空気が辺りを包む透明な時間。
静寂が支配する空間。
太陽は、遠慮がちに手を伸ばすように、静かにそっと
その柔らかな光を差し出している。
それらが混ざり合い、今日も世界が始まる。
僕は、前を見て歩き続けた。
file.006 虹
雨上がり、空に突然架かった大きな虹は
子どもがクレヨンで線を描くように
無造作に七つの光で青空を彩る。
”どうか消えないで”と願いながら
虹の始まりを突き止めようと必死に自転車を
走らせた子どもの頃の思い出。
file.005 Sainte Chapelle教会
パリのSainte Chapelle教会
無数のステンドグラス一つ一つに描かれた神の物語。
日の光に照らされたステンドグラスから大聖堂に射し込む
色とりどりの光。
教会は神の意志と語り合い、
身を委ねた敬虔な信者達の祈りが昇華する場。
この静謐な礼拝堂を支配する光が開くのは、運命の扉。
file.004 緑の並木道
緑の木々の並木道、
日の光に照らされた無数の緑の葉は、
緑色のポテンシャルを全て引き出したかのように
多種多様で、明るく鮮やかに色づき、
あたりに優しい緑の光を溢れさせている。
緑の光の温かさに包まれていると、
体中で光合成をしているような不思議な気持ちを覚えた。
僕の生命は、木々の中に息づいていた。